改修 消防法

どこに掲示すればいい?避難器具にまつわる標識類まとめ【設置基準】

避難器具にまつわる標識類

https://aokimarke.com

強欲な青木
避難器具まわりの標識って、数が多いから混乱しちゃうよぉ‥。
設置義務が生じるかどうかのパターンも含めて、5つに分けて避難器具の標識について解説してみましょう!
管理人

消防用設備等の設置されているところに標識類あり‥と共に掲げられる標識類ですが、避難器具については掲示すべき箇所も複数あります。

消防検査時の指導や消防用設備点検の不備事項として挙げられない為に、キチンと知った上で適切な位置に標識類を掲げておきましょう!

 

避難器具にまつわる標識類の設置基準

 

①「避難器具」である旨を示す標識

吊下げ避難はしごと取付金具-タラップ

告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項にて、以下の文言が謳われています。

標識には、「避難器具」又は「避難」若しくは「救助」の文字を有する器具名を記載すること。

ただし、避難器具である旨が容易にわかるシンボルマークを表示した場合には、この限りでない。

また、大阪市の消防用設備に関する運用基準 第10章 標識類にて「避難器具」の標識については「避難はしご・救助袋など避難または救助の文字を使用する器具名にあっては当該器具名とすることができる。」と謳われています。

強欲な青木
要は、避難はしごには「避難はしご」って標識で、救助袋には「救助袋」って標識を掲げときゃエエってことやろ?

そうなります。緩降機については “避難” とか “救助” の文字が使用されていない器具になるので「避難器具」って標識を掲げる必要あることが文脈から分かりますね。
管理人

 

避難器具のシンボルマークって?

避難器具 シンボルマーク

告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項上では「標識もしくはシンボルマーク」を掲げる風に謳われていましたが、現在は文字ベースの標識が殆どでしょう。

強欲な青木
㈱石井マーク様もTwitter上で頻繁に言及されていらっしゃるように、まだまだ日本ではISOに準拠した図記号が普及してないから「避難器具である旨が容易にわかるシンボルマーク」ってのは今のところ用いられてないね。
民泊ブームとかオリンピック・パラリンピックの誘致が決定した時分に「JIS規格である消火器のシンボルマークを掲げよう!」という動きがあったけど、新型コロナの影響もあって国際化の動きは滞りそうな印象です。
管理人

参考図記号データベース(株式会社石井マーク様の公式サイトより)

 

「救助袋」標識の存在意義

ハッチ式 救助袋

例えば、ハッチ(ベランダ等にある避難器具の収納された場所)式の場合に「避難器具」としか記されていないと、ハッチを開けるまで避難はしごor救助袋どちらか分かりません。

タマスケ博士
Dr. タマ王
(6)項ロ 福祉施設等の用途だと、同じハッチ式でも「避難はしごじゃなくて救助袋しか設置できない」ってパターンがあるんじゃ。
自力避難ができない人の場合、救助袋じゃないと意味がない‥ってケースがあり得るので「救助袋」って掲げられていた方がベターでしょう。
管理人
強欲な青木
法的には規定がない場合でも、より親切な方を選べるように知識を蓄えておきたいですね。
まさに!よっ、消防設備士の鑑(かがみ)!よっ、去勢済みの猫!
管理人

 

②避難器具の「使用方法」標識

斜降式救助袋の操作方法

告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項にて、以下の文言が謳われています。

(一) 標識は、避難器具の直近の見やすい箇所に設置すること。ただし、使用方法の簡便なものにあっては、設置しないことができる。

(二) 使用方法は、図及び文字等を用いてわかりやすく表示すること。

画家タマスケ
画家タマスケ
たまぁ~に、個性的な絵が描かれた使用方法を見かけることがあるね。
ツッコミどころが用意されている使用方法もあるので、皆さん是非一度チェックしてみて下さい。(笑)
管理人
首長タマスケ
首長タマスケ
そういえば避難器具の使用方法の内容自体も、モノによって微妙に違ったりしますよね。
例えば緩降機だと見た目ほどんど同じでも “一動作式” ってタイプと通常のタイプでは操作手順が異なるので、機器に適した使用方法を必ず掲げましょう。
管理人

 

③「避難器具設置場所」

避難器具設置場所

告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項にて、以下の文言が謳われています。

標識の設置場所は、避難器具の直近の見やすい箇所及び避難器具の設置箇所に至る廊下、通路等に設けること。

ただし、避難器具の設置場所が容易にわかる場合にあっては、この限りでない。

点検タマ王
ベランダに救助袋が設置されている建物に行ったとき、この「避難器具設置場所」の標識が窓上に無かったから全部カーテン開けて確認する羽目になったことあります。

火災発生時に「避難器具を探すところ」から始まってしまっては、逃げ遅れてしまう可能性が大幅に上がってしまうでしょう…。
管理人

 

「避難器具設置場所」用の非常照明装置

非常照明

また、大阪市の消防用設備に関する運用基準 第1節 避難器具 第6 標識にて、以下の文言が謳われています。

避難器具の設置場所を示す標識を屋内に設けるものは、常用電源が遮断された場合においても標識が識別できる明るさが確保できるよう、非常用の照明装置が設けられていること。

強欲な青木
あれれー。"避難器具設置場所" には、停電して部屋の照明などが消えた場合でも避難器具の操作及び避難に支障のない明るさを確保できるように "照明装置" を設けることが大阪市火災予防条例 第54条〔避難施設等の管理〕で定められているから上記の文言って不要じゃないのー?。
いやいや、それが「当該避難器具が屋外(バルコニー・屋上など)に設けられており、自然採光で避難上支障が無いものには照明装置類が不要‥」の文言が大阪市の消防用設備に関する運用基準 第一節 避難器具 第7 設置場所の明るさの確保で謳われているから非常照明がない場合もあるんだよ。
管理人

そこで、以下の様な器具が設置されることとなります。

 

光源つき「避難器具設置場所」

避難器具設置場所

強欲な青木
なるほど「避難器具設置場所」の標識自体が光れば、おのずと『避難器具の設置場所を示す標識を屋内に設けるものは、常用電源が遮断された場合においても標識が識別できる明るさが確保できるよう‥』の要件は満たせますか。
ちなみに、上の写真の「避難器具設置場所」機器は “屋外に固定はしご” って建物に設置されていました。
管理人

よって、光源付きの「避難器具設置場所」を改修する際に『安いし、普通の標識に交換しとこ。』ってのはNGとなります。

※現行品はLED化でスリムになっています。
👇

避難はしご-の標識

 

※特定一階段等防火対象物の場合

避難器具設置等場所を明示した標識

消防法第27条〔避難器具に関する基準の細目〕の第3項にて、以下の条文が謳われています。

ハ 特定一階段等防火対象物における避難器具設置等場所がある階のエレベーターホール又は階段室(附室が設けられている場合にあっては、当該附室)の出入口付近の見やすい箇所に避難器具設置等場所を明示した標識を設けること。

正義タマスケ
正義タマスケ
特定一階段等防火対象物(地階や3階以上の階に特定用途があって、そこから避難階までの階段が1つしかない防火対象物)の場合ですね。
はい、避難経路図の様な絵に避難器具設置場所を明記した標識をエレベーターホール又は階段室に掲げなければならないので注意が必要です。
管理人

 

④「避難器具設置室」

こちらも、告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項に基づく設置となります。

標識の設置場所は、避難器具の直近の見やすい箇所及び避難器具の設置箇所に至る廊下、通路等に設けること。

ただし、避難器具の設置場所が容易にわかる場合にあっては、この限りでない。

消防署予防課のタマスケ
予防タマスケ
避難器具は消防法施行令第25条〔避難器具に関する基準〕にて、防火対象物の “階” に設置されているので原則「その階の、どこかの部屋」に設置されていればOKというルールになっています。 
例えば以前(5)項ロ 共同住宅から(5)項イ 民泊に用途変更する際、階ごとに1台のみ緩降機を設置するケースありましたよ(5階なら503号室だけに設置といった感じです)。
管理人
ピエロ
ピエロ
その階の廊下を歩いただけでは「どの部屋に避難器具があるか分からない」って具合になるので、この標識は必須になるわけですか。

お見込みの通り‥。
管理人

 

⑤「避難器具降下地点」

避難器具降下地点

こちらの「避難器具降下地点」の標識は、避難空地を確保する為に設けられるものとなります。

避難空地‥避難器具の降着面等付近に必要な避難上の空地をいう。

 

避難空地について、告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第三 避難器具の設置方法等 ト にて以下のように規定されています。

避難空地には、当該避難空地の最大幅員(1mを超えるものにあっては、1mとすること。)以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路が設けられていること。

 

降下地点の地面にマークでも可

避難器具 降下地点マーク

上述した「避難上の安全性が確保されている‥」の要件を満たすことができれば、標識ではなく地面に直接マークを施すことも可能となっています。

兵庫県姫路市の消防用設備等の技術基準 第16 避難器具 3 設置位置等では、以下の文言が謳われています。

(5) 避難空地には、当該避難空地に避難障害物が存知されることがないように、標識の設置・ゼブラ表示等の措置を講じること。

強欲な青木
おーっと!標識もしくはゼブラ表示の二択であれば、標識を設置した方がラクそうだぁーーッ!!
大阪市内でも、避難空地となる降下地点には『標識を掲げるか、ゼブラ表示するかして下さい。』と指導ありますね。
管理人

 

上述した姫路市と同じ兵庫県の、明石市では消防用設備等の技術基準 第15 避難器具 (3)避難はしご にて以下の通り規定されています。

エ 避難空地には、避難空地を示すペイントまたは標識を施すこと。

強欲な青木
『なんで同じ兵庫県なのに、一方は “ゼブラ表示等” と表現して一方は “ペイント” って表現しているのですか?』って2時間くらい質問したいですね。
そういえば前に某所で “金属製の避難器具降下地点マーク” みかけたことありますけど、アレ設置する場合にペイントって条文やと不適‥って判断にも‥。
管理人

金属製 避難器具降下地点

要は、避難空地に障害物が置かれず避難上の安全性が確保するという目的が達成されていれば、標識の設置でもゼブラ表示等でもOKなのです。

 

降下地点の障害物

避難器具 降下障害

強欲な青木
例えば、避難器具降下地点となる避難空地に自転車が停められてしまうと有事の際に避難の支障となってしまいかねません。
ベランダの避難ハッチ下に植木鉢とか洗濯物などが置かれてしまっている建物有りますが、消防用設備点検の際には「障害物あり」と消防法に則っていない旨を報告することになってしまうので心当たりある方は速やかに移動お願い致します。
管理人

 

避難器具は標識の力を最大限まで借りてこそ、本来の役目を果たすことができるものとなっています。

 

◎ まとめ

  • 避難器具にまつわる標識類は、大きく①「避難器具」である旨を示す標識・②避難器具の「使用方法」標識・③「避難器具設置場所」・④「避難器具設置室」・⑤「避難器具降下地点」の5つがあった。
  • 告示第2号〔避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目〕の第5項上では「標識もしくはシンボルマーク」を掲げる風に謳われていたが、日本ではISOに準拠した図記号が普及してないから「避難器具である旨が容易にわかるシンボルマーク」ってのは今のところ用いられていなかった。
  • 「避難器具降下地点」の標識は、避難空地を確保する為に設けられるものとなっていて、避難空地に障害物が置かれず避難上の安全性が確保するという目的が達成されていれば、標識の設置でもゼブラ表示等でもOKであった。
  • この記事を書いた人

管理人

【経歴】鈴鹿高専材料工学科 ⇒ 静岡大学工学部(3年次編入学) ⇒ 院 ⇒ 鈴与㈱ ⇒ 某A防災㈱ ⇒ 青木マーケ㈱※独立
【保有資格】消防設備士全類・危険物取扱者全類・第二種電気工事士・工事担任者(AI・DD総合種)・第三種電気主任技術者
【主な活動】月刊誌「電気と工事(オーム社)」コラム執筆・ブログ(月間40万PV)・YouTubeチャンネル「強欲な青木&消防設備士」の動画作成

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