緩降機の技術上の規格を定める省令

緩降機の技術上の規格を定める省令

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消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二十一条の二第二項の規定に基づき、緩降機の技術上の規格を定める省令(昭和四十年自治省令第四号)の全部を改正する省令を次のように定める。

(趣旨)第一条

この省令は、緩降機の技術上の規格を定めるものとする。

 

(用語の意義)第二条

この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 緩降機 使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下することができる機構を有するものをいう。
二 固定式緩降機 常時取付け具に固定されて使用する緩降機をいう。
三 可搬式緩降機 使用時に取付け具に取り付けて使用する緩降機をいう。
四 調速器 緩降機の降下速度を一定の範囲に調節する装置をいう。
五 調速器の連結部 取付け具と調速器を連結する部分をいう。
六 着用具 使用者が着用することにより使用者の身体を保持する用具をいう。
七 緊結金具 ロープと着用具を連結する金具をいう。
八 リール ロープ及び着用具を収納するために巻き取る用具をいう。

 

(一般構造)第三条

緩降機の構造は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 使用上安全であり、かつ、使用中に分解、損傷又は変形を生ずるおそれのないものであること。
二 調速器、調速器の連結部、ロープ及び着用具で構成されるものであること。
2 固定式緩降機の構造は、前項に定めるもののほか、取付け具に確実に固定できるものでなければならない。
3 可搬式緩降機の構造は、第一項に定めるもののほか、次の各号に適合するものでなければならない。
一 調速器の質量が十キログラム以下であること。
二 取付け具に安全環により確実かつ容易に取り付けることができること。

 

(部品の構造)第四条

調速器は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 堅ろうで、かつ、耐久性があること。
二 常時分解掃除等を行わなくても作動すること。
三 降下時に発生する熱によって機能に異常を生じないこと。
四 降下時にロープを損傷しないこと。
五 機能に異常を生じさせるおそれのある砂その他の異物が容易に入らないよう措置されていること。
六 カバーが堅固な構造であること。
七 ロープが調速器のプーリー等から外れない構造であること。
2 調速器の連結部は、使用中に分解、損傷、変形又は調速器の離脱を生じないものでなければならない。
3 ロープは、次の各号に適合するものでなければならない。
一 しんに外装を施し、かつ、全長を通じ均一な構造であること。
二 降下時に使用者を著しく旋転させるねじれ又は機能に支障をおよぼすおそれのある損傷を生じないこと。
三 外装を金剛打ちとしたもの又はこれと同等以上のねじれを生じない構造であること。
4 着用具は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 容易に着用することができること。
二 着用する際には、使用者の身体の定位置を、操作を加えることなく確実に保持すること。
三 着用し使用する際に、使用者から外れず、かつ、緩まないものであること。
四 取り外す操作をした場合には、容易に取り外すことができること。
五 降下時に使用者が監視及び動作するうえで支障を生じないものであること。
六 使用者に損傷を与えるおそれがないこと。
七 ロープの両端にそれぞれ最大使用者数(一回で降下できる使用者の最大数をいう。以下同じ。)に相当する数の着用具を離脱しない方法で連結してあること。
八 着用具のうち、ベルトは、ほつれが続けて生じないものであること。
九 ベルトは、最大使用荷重(緩降機を使用する場合において、当該緩降機に加えることのできる最大荷重をいう。以下同じ。)を最大使用者数で除して得た値に六・五を乗じて得た値に相当する引張荷重を加えて五分間保持した場合、破断又は著しい変形を生じないものであること。
5 緊結金具は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 ロープと着用具を離脱しない方法で連結してあること。
二 使用中に離脱、分解、損傷又は変形を生じないこと。
三 使用者に損傷を与えるおそれがないこと。
6 リールは、次の各号に適合するものでなければならない。
一 使用時にロープ及び着用具が円滑に展張できるように巻き取ることができること。
二 使用者に損傷を与えるおそれがないこと。

 

(最大使用荷重)第五条

緩降機の最大使用荷重は、最大使用者数に千ニュートンを乗じた値以上でなければならない。

 

(材料)第六条

緩降機の部品で次の表の上欄に掲げるものに用いる材料は、それぞれ当該下欄に掲げるもの又はこれらと同等以上の強度及び耐久性を有するものでなければならない。

部品名
材料
ロープ
しん
JIS(産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)第二十条第一項の日本産業規格をいう。以下同じ。) G 三五二五(ワイヤロープ)に適合するもので耐食加工を施したもの
外装
綿糸又はポリエステルのもの
ベルト
綿糸又はポリエステルのもの
リング・緊結金具・安全環
JIS G 三一〇一(一般構造用圧延鋼材)に適合するもので耐食加工を施したもの
リベット
JIS G 三一〇四(リベット用丸鋼)に適合するもので耐食加工を施したもの

 

(試験の条件)第七条

次条から第十条まで及び第十二条から第十五条までに定める試験は、周囲温度十度以上三十度以下の状態で行わなければならない。

 

(強度試験)第八条

緩降機は、使用者が降下するときにかかる荷重方向へ着用具に最大使用荷重に三・九を乗じて得た値に相当する静荷重(最大使用者数が二以上のものにあっては、それぞれの着用具に最大使用荷重を最大使用者数で除した値に三・九を乗じて得た値に相当する静荷重)を加えて五分間保持した場合、次の各号に適合するものでなければならない。
一 調速器、調速器の連結部、リング及び緊結金具は、分解、破損又は著しい変形を生じないものであること。
二 ロープは、破断又は著しい損傷を生ぜず、かつ、着用具又は緊結金具から離脱しないものであること。

 

(降下速度試験)第九条

緩降機の降下速度は、試験高度(ロープの長さを最大限に使用する高さ(ロープの長さが十五メートルを超えるものにあっては、十五メートルの高さ)をいう。以下同じ。)に緩降機を取り付け、着用具の一端に荷重を加えて降下させた場合、次の各号に適合するものでなければならない。
一 二百五十ニュートン、六百五十ニュートンに最大使用者数を乗じて得た値に相当する荷重及び最大使用荷重に相当する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも十六センチメートル毎秒以上百五十センチメートル毎秒以下であること。
二 六百五十ニュートンに最大使用者数を乗じて得た値に相当する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ十回降下させた場合、いずれも二十回の平均降下速度の八十パーセント以上百二十パーセント以下であること。

 

(含水降下試験)第十条

緩降機は、ロープを水に一時間浸した後、直ちに試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に前条第二号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも降下速度が同号に規定する平均降下速度の八十パーセント以上百二十パーセント以下であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(低温試験及び高温試験)第十一条

緩降機は、零下二十度及び五十度に二十四時間放置した後、直ちに試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に第九条第一号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも同号に規定する速度の範囲内であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(繰返し試験)第十二条

緩降機は、試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に最大使用荷重に相当する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ十(ロープの長さが十五メートルを超えるものにあっては、ロープの長さを十五で除して得た値に十を乗じて得た値(小数点第一位以下の端数は、切り上げるものとする。))回降下させることを一サイクルとして五回繰り返した後、第九条第一号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも同号に規定する速度の範囲内であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(落下衝撃降下試験)第十三条

緩降機は、調速器から降下側のロープを二十五センチメートル引き出してこれを降下方向と正反対の方向に引き上げ、着用具の一端に最大使用荷重に相当する荷重を加えて当該着用具を落下させることを五回繰り返した後、試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に第九条第一号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも同号に規定する速度の範囲内であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(落下試験)第十四条

可搬式緩降機は、調速器を硬く、弾力性のない平滑な水平面に床上一・五メートルの高さから落下させることを五回繰り返した後、試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に第九条第一号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させた場合、いずれも同号に規定する速度の範囲内であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(腐食試験)第十五条

緩降機は、JIS Z 二三七一(塩水噴霧試験方法)に定める試験方法により塩水を八時間噴霧した後に十六時間放置することを一サイクルとして五回繰り返した後、二十四時間自然乾燥させた場合、試験高度に緩降機を取り付け、着用具の一端に第九条第一号に規定する荷重を左右交互に加えて、左右連続してそれぞれ一回降下させたとき、いずれも同号に規定する速度の範囲内であり、かつ、機能又は構造に異常を生じないものでなければならない。

 

(表示)第十六条

緩降機は、次の各号に掲げる事項を、その見やすい箇所に容易に消えないように表示しなければならない。
一 型式
二 型式番号
三 ロープ長
四 最大使用荷重
五 最大使用者数
六 製造者名又は商標
七 製造年月
八 製造番号
九 取扱い上の注意事項

 

(基準の特例)第十七条

新たな技術開発に係る緩降機について、その形状、構造、材質及び性能から判断して、この省令の規定に適合するものと同等以上の性能があると総務大臣が認めた場合は、この省令の規定にかかわらず、総務大臣が定める技術上の規格によることができる。

附 則
1 この省令は、平成六年二月一日から施行する。
2 この省令の施行の際、現に日本消防検定協会又は自治大臣の指定する者の行う消防用機械器具等についての試験を申請している緩降機に係る試験については、なお従前の例による。
附 則 (平成九年四月二四日自治省令第二八号)
(施行期日)
1 この省令は、平成九年五月一日から施行する。ただし、第五条及び第九条の改正規定は、平成十一年十月一日から施行する。
(経過措置)
2 平成九年五月一日において、現に日本消防検定協会の行う検定対象機械器具等についての試験を申請している緩降機に係る試験については、改正後の緩降機の技術上の規格を定める省令(以下「新省令」という。)第二条第六号及び第八号、第三条第三項、第四条並びに第六条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
3 平成九年五月一日において、現に型式承認を受けている緩降機及び前項の規定により従前の例によることとされた試験の結果に基づいて型式承認を受けた緩降機に係る型式承認は、新省令の規格による型式承認とみなす。
4 平成十一年十月一日において、現に日本消防検定協会の行う検定対象機械器具等についての試験を申請している緩降機に係る試験については、新省令第五条及び第九条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
5 平成十一年十月一日において、現に型式承認を受けている緩降機及び前項の規定により従前の例によることとされた試験の結果に基づいて型式承認を受けた緩降機に係る型式承認は、新省令の規格による型式承認とみなす。
附 則 (平成一二年九月一四日自治省令第四四号)
この省令は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から施行する。
附 則 (令和元年六月二八日総務省令第一九号)
この省令は、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年七月一日)から施行する。