その他 消防設備士

【課題】予防行政の電子化について消防設備士が考えてみた結果【DX】

予防行政 DX

https://aokimarke.com

強欲な青木
新型コロナの影響もあって「報告書の郵送」や「押印の省略」など徐々に変化していってるけど、これから消防設備士の商売に深くかかわる予防行政ってどうなるんだろう…?
来たるべき未来が少しでも早く到来する様に、消防設備士も予防行政について共に考えて意見を持っておく必要があると思います。
管理人
強欲な青木
そういや管理人アンタ先日「維持台帳システム」を用いたDX化について、最前線で動いているアークリード㈱尾阪社長と何やら事務所でニヤニヤと怪しいビデオチャットしとったね。
ハイ(笑)兼ねてより尊敬するガチ勢な尾阪社長の考えを、ご自身が作成されたフローチャート㊙と共に話し合える機会は大変有難かったです。自身の考えも深まりましたので、一旦整理して記しておきたいと思います。
管理人

DXとは‥デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)のことで「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。本用語は「DX」と表記されることが多いが、それは英語圏では「transformation」の「trans」の部分を「X」と略すことが一般的だからである。

参考Wikipedia デジタルトランスフォーメーション

 

予防行政の電子化について消防設備士が考えてみた

まず「維持台帳システム」構想によって変化し、建築会社および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分は以下の通りです。

【消防同意~使用開始まで】

  1. 消防同意後に付与された施設No.を用いて、選定された業者が手続き及び工事を担当。
  2. 着工届の提出は「維持台帳システム」上にアップロード、所轄消防署等が確認して承認されればメールで連絡。
  3. 工事着手や中間検査の申請も「維持台帳システム」上で申請し、日時決定。
  4. 工事完了後の設置届も「維持台帳システム」上にアップロード、消防検査日時をメールにて調整。
  5. 実地での消防検査が実施された後、検査済証が交付されれば建物関係者および建築会社側でダウンロード可能に。

 

次に「維持台帳システム」構想によって変化し、建物の管理権原者・関係者(防火管理者など)および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分は以下の通りです。

【防火管理上の手続き関係】

  1. 建物の管理権原者・関係者および防火管理者が「維持台帳システム」上で防火・防災消防計画書等のやり取りが可能。
  2. 消防設備業者は消防用設備点検結果報告書や防火対象物・防火管理点検結果報告書をアップロードすることで提出。
  3. 立入検査の連絡を「維持台帳システム」上で行い、検査後にアップロードされた立入検査結果報告書が入手可能に。
  4. 防火管理者が消防計画に基づく訓練やその他の実施事項についての書類を「維持台帳システム」上で提出。
  5. その他、既設の建物について消防設備業者が改修等をする際に着工届や設置届を「維持台帳システム」上で提出。
消防署予防課のタマスケ
予防タマスケ
所轄消防署とのやり取りが随分と楽になる印象がありますね、Web上で完結する案件も増加しそうです。
仰る通りでして、これまで手続きが不便な故に無理くりビジネスにせざるを得なかった案件が減らせるかと。
管理人
AI
‥まず、見えへんねん。笑(※尾阪社長のフローチャートをご覧になって)
社長‥メガネの上にメガネされてますけど、それは一体何ですか!?
絶望タマスケ
絶望タマ王
AI
これは拡大鏡、そんでコッチは老眼鏡。
色んなメガネあるんですね…。
タマスケ広報課長
3Dタマスケ

 

◎ 電子化のメリット

紙媒体が不要に

今のところ所轄消防署に届け出る書類関係は全て ”紙” となっていますが、維持台帳システムが導入されれば不要となるでしょう。

郵便ポスト

令和2年12月25日に通知された「消防関係手続(火災予防分野)における書面規制・押印・対面規制の見直し及び手続のオンライン化に係る関係通知の一部改正等について」には以下の文言が謳われています。

押印を不要とする申請書、届出書等についても、押印の廃止に伴い、電子メール、電子申請システム等(以下「電子メール等」という。)による提出が可能となること。

参考消防関係手続(火災予防分野)における書面規制・押印・対面規制の見直し及び手続のオンライン化に係る関係通知の一部改正等について

強欲な青木
あれれー、この文言って新型コロナ禍での押印省略の通知でも謳われていたけど実際は機能していなかったよねー?
大阪市内だと所轄消防署のメールアドレスってのがありませんでしたし、大阪府内の所轄消防署でもバラバラで『ウチは郵送もムリ or 捺印して下さい』って運用してるところあったので通知に基づいた仕組みにして欲しいと思います。
管理人
郵送 消防関係書類
参考【大阪市】なぜ郵送で消防関係書類の届出がされないのか【生産性向上】

続きを見る

 

押印の省略

現在も関係者の押印が省略可能になっていますが、加えて所轄消防署サイドの押印も省略できそうです。

タマスケ免状
タマスケ免状
本人確認の為に、例えば維持台帳システムとマイナンバーが紐づけられれば ”なりすまし” 防止になるかもしれません。

 

移動の省略

わざわざ車で所轄消防署を回るといった作業も不要となります。

化学タマスケ
化学タマスケ
車を使わなければ排気ガスも発生しないので、エコですよね。
兼ねてより移動の時間が超ムダで『‥この行為に本質的な価値ないだろ。』と思っていたので早くそうなって欲しいです。
管理人
強欲な青木
SDGsといった話が叫ばれている昨今、これからの世の中的にも取り組むべきかと。

SDGsとは‥持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs〈エスディージーズ〉)は国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる。

参考Wikipedia 持続可能な開発目標

 

紙自体の省略

大量に紙を使っては修正の為に差し替えるといった、紙にまつわるコストを削減できるというのも魅力的です。

 

防火管理が容易に

現在も実は ”維持台帳” ってのは所轄消防署および建物の管理権原者・関係者様それぞれが紙媒体で管理しています。

本 紙媒体

それらの情報が同じシステム上で一つにまとまることで、建物の防火管理に関する情報が追いやすくなるでしょう。

 

サービスの質が向上する

現在、残念ながら無資格者による点検や悪徳業者による中身の無い書面だけの報告書といったサービスがまかり通ってしまう面があります。

ふるい

システム上で本来通り有資格者しか報告書の提出が出来ない仕様で管理したり、優良業者の一覧が表示されれば安心に繋がるでしょう。

審判タマスケ
審判タマ王
消防法に則った商売を継続していく為には、言い方キツいですが「不適切な節約」をする人を締め出す必要があります。
いやアカンことして自分だけが損するなら放っておくんですけど、お客様や業界にとっても大迷惑ですから何とか手を打たなきゃならんのです。
管理人

 

◎ 電子化のデメリット

変化が苦手な人の排除

例えば今でもガラケーを使用されている様な変化が苦手な方は、新しいシステムになると商売ができない人となる可能性があります。

電子化 本

強欲な青木
誰でも使えるレベルの仕組みにせなスタンダードにならへん‥代替案で紙媒体も可能とすると結局そっちばかりになるパターンも。
しかし中にはパソコン環境がそもそも無い人もいらっしゃると思うから、何かしら配慮して全員が参加できる様にせなアカンよね。
管理人

 

関係者(防火管理者など)との連絡

維持台帳システムが導入された際、如何に建物の管理権原者を巻き込んで ”使える” 状態で運用できるかが「カギ」となるでしょう。

電話 連絡

強欲な青木
この『こんなん使って運用します、よろしゅう!』って初めの呼びかけが、かなり手間コストかかるんちゃうか。
実務に携わる上で例えば『(‥防火管理者さん、メッチャおばあちゃんで名前だけやんか。)』ってな状況に遭遇すること多々あります。
管理人
強欲な青木
防火管理に殆ど携わらなくても容認されていた時代から、ちゃんとできる環境に変化したときに理解が得られるかってもの課題ですね。
この前、サウナで一緒になったネパール人に『ネパールの消防法って、どんな感じですか?』って聞いたんよ。
管理人
滝行タマスケ
滝行タマ王
ほう、何て仰ってました?
『ん~、‥一応あるけど誰も守ってないんじゃない。ハハハ』って仰ってました。
管理人
強欲な青木
日本でも同じ様な認識のまま停滞している発展途上な方いらっしゃいますので、消防・防火管理について関わってもらえる一手となれば‥いいですね!

 

既存システムとの競合

維持管理システムが登場すると、民間企業が販売している既存の点検報告書作成ソフトや建物管理データベースは少なからず競合するでしょう。

クリスマス チェス

強欲な青木
維持管理システム+αで利便性を向上させるような物は残る可能性ありますが、同じ機能がタダで使えるものが国の予算でスタンダードになれば排除される物がありそうです。
弊社については点検報告書などの書類関係はアークリードさんのAIBO-ZU使ってますし、建物管理データベースは社長お手製のAccessでガッツリ管理されてます。
管理人
泥棒タマスケ
泥棒タマスケ
冒頭で述べた維持管理システムの機能については現段階で理想の話でしかないですが、今後は消防設備業者にとって必要となるソフト面の機能も変化していきそうです。
例えば郵送OKや電子化によって「報告書提出費」といった移動に伴う手数料みたいな費用も無くなっていて、仕事における ”価値の位置” みたいなのがハッキリする方向に変化するかと。
管理人

 

◎ 他業界のシステム

通関(NACCS)

管理人が総合職で新卒入社した会社にて意図せず配属された港湾コンテナターミナルでは、通関の手続きがNACCSというシステムで行われていました。

NACCS 通関

通関とは‥貿易において貨物を輸入及び輸出をしようとする者が、税関官署に対して「貨物の品名・種類・数量・価格など」に関する事項を申告し、必要な検査を受けた後に、輸入の場合は関税など必要な税金を納付させ、税関から輸出入の許可を受ける手続き。

参考Wikipedia 通関

NACCS(ナックス)とは‥国際貿易における、通関及び輸入の際の関税の納付などを効率的に処理することを目的に構築された、税関官署・運輸業者・通関業者・倉庫業者・航空会社・船会社・船舶代理店・金融機関等の相互を繋ぐ電子的情報通信システムである。正式名称は「輸出入・港湾関連情報処理システム(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System)」。従前は、通関情報処理システムと呼ばれてきたが、港湾手続・食品衛生手続・動植物検疫手続・入国管理手続等の他省庁関係手続きにも業務を拡大することを見越して改称された。

NACCSにより外国貨物の管理と通関業務は大幅に向上した。現在、貨物の通関業務・外国貨物の管理はその大半がNACCSを使用して行われている。

参考Wikipedia NACCS

強欲な青木
NACCSって元々は独立行政法人やったけど、民営化されて輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)株式会社になったんですよね。
改めて通関の利害関係者について確認すると、えげつない多さで市場の大きさも別格ってのが分かります。いや正味、前職のビジネスモデルは盤石過ぎて凄かったなぁと今だからこそ身に染みるものあります。
管理人
ダンクタマスケ
ダンクタマスケ
ショーボーも商売として末永く成立し、火災による被害で悲しむ人をできるだけ減らせるように動き続けられる世の中であればと思うよ。

 

不動産(REINS)

不動産業界ではREINS(レインズ)というシステムが用いられており、不動産会社はコレを駆使して建物の売買等を行っています。

レインズ REINS

レインズ(REINS)とは‥国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の英語の頭文字を並べて名付けられ、組織の通称にもなっています。

参考REINZ TOWER

悪徳タマスケ
悪徳タマスケ
不動産業界も市場ゴッツイし、悪徳業者もナンボでもおるからシステムで何とかせなアカンって強烈な課題感はあったやろな。
もはやREINSが無いと商売にならん…ってレベルに達して要るっぽいので、消防設備業界が模倣すべきシステムの一つかと。
管理人
強欲な青木
あと、ずっと前の月間フェスク(業界誌)に『北海道において、宅建士にのみ消防用設備点検を実施していない防火対象物を教えた結果、報告率が上がった。』って話が載ってたよね。
今後は、所轄消防署しか把握していない建物情報が、例えば維持台帳システムに登録している消防設備業者にのみ開示される‥等あるかも知れません。
管理人
ピザタマスケ
ピザタマ王
実際、宅建士を例に挙げますと “ハトマーク” というよく見る宅建協会のロゴの組織に入会していると、“物件情報をシェア” することができる‥って仕組みもあるっぽいので併せて模倣できれば消防関係のシステムも有意義な物になりそう。

参考点検報告書 ”電子化” で生産性UP!

 

建築確認

消防設備業は建設業にも分類されていますが、建設業における「建築確認申請」も電子申請が可能となっています。

建築確認申請

建築確認申請(けんちくかくにんしんせい)とは‥建築基準法第6条第6条の2第6条の3に基づく申請行為である。 法に定められた建築物を建築しようとする場合、建築主は申請書により建築確認を受けて確認済証の交付を受けなければ建築することができない。

施工管理ネコ
施工管理ネコ
今後は「消防同意」も電子申請に対応しよう‥という動きがありますね。
調べてたら何やら色んな戦略やら方針やらの影響で電子申請の動きあったみたいです、新型コロナ禍で消防設備業界ですら動き合ったかと思うと他業界もますます加速しそうな気がします。
管理人

消防同意とは‥

消防同意は、確認申請手続きや許可申請を必要とする建築計画についての、防火上の安全確保を目的とする制度です。

確認申請-消防同意のスキーム

建築基準法第93条に基づき、特定行政庁・建築主事又は指定確認検査機関は、建築基準法に規定される許可又は確認申請の手続きにおいて、消防長等に同意(消防同意)を求めることとなっています。

参考レオパ◯スの消防法違反について解説

タマスケ博士
Dr. タマ王
消防法第7条〔建築許可等についての消防長又は消防署長の同意〕でも、まず、建物を新設する際には建築主(建物を建てたい人)が “①確認申請” を特定行政庁の建築主事(俗に言う “ギョーセー” )宛に行うよう謳われとるんじゃ。
そして行政側から『こんな建物つくるんすけど、消防OKすか…?』と消防長・消防署長に “②同意を求める” スキームがあり、消防長・消防署長側は『ふぅ~ん、この条件なら良いじゃん。』と “③消防同意” を行政側に返しますね。
管理人
強欲な青木
その後 “④建築確認” しましたと行政側から建築主に『消防法的にも問題ないっすわ』と伝えられます。
つまり、建築主事に提出していた書類に偽りがあれば、消防側も共倒れになる可能性の高い仕組みってワケです。
管理人

消防同意の件数

平成29年度の全国における消防同意事務に係る処理件数は24万7,443件で、そのうち不同意とされたものは27件でした。

消防同意 件数

参考平成30年版 消防白書

自由のタマスケ
自由のタマスケ
消防同意の件数、多いですね。こりゃ電子化のニーズ高いワケです。
消防法上の防火対象物‥つまり消防用設備等の設置義務が生じない建物についても消防同意が求められるケースが多々含まれているのでしょう。
管理人

 

◎ 仕組みの中で動く側が考えるべきコト

放っておいても、いずれ未来は誰かによって時代と共に最適化されていくでしょう。

気球

ピエロ
ピエロ
仕組みの中で動く我々が、何も考えず仕事してたら最適化されるチャンスも逃すよね。
次世代が取り組むべき課題に着手できる様に、できるだけケツ拭かさんと前に進んでおきたいところ。
管理人
画家タマスケ
画家タマスケ
ちゃんとした仕事をする人・組織が報われるっていう環境で我々や次世代が働けるように、未来を描いていきたいのです。
噂では電子化に充てる予算も用意されるらしいから、各々意志持って声あげていきましょう!
管理人

 

◎ まとめ

  • 予防行政に係る「維持台帳システム」を用いたDX化について、最前線で動いているアークリード㈱尾阪社長と話して考えたコトを整理した。
  • 「維持台帳システム」構想によって、主に建築会社および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分として【消防同意~使用開始まで】が挙げられ、建物の管理権原者・関係者(防火管理者など)および消防設備士が大きな恩恵を受ける部分として【防火管理上の手続き関係】が挙げられた。
  • 電子化のメリットとして①紙媒体の省略・②防火管理が容易に・③サービスの質向上が挙げられ、デメリットとして①変化が苦手な人の排除可能性・②関係者(防火管理者)との連絡・③既存システムとの競合が挙げられた。
  • この記事を書いた人

管理人

【経歴】鈴鹿高専材料工学科 ⇒ 静岡大学工学部(3年次編入学) ⇒ 院 ⇒ 鈴与㈱ ⇒ 某A防災㈱ ⇒ 青木マーケ㈱※独立
【保有資格】消防設備士全類・危険物取扱者全類・第二種電気工事士・工事担任者(AI・DD総合種)・第三種電気主任技術者
【主な活動】月刊誌「電気と工事(オーム社)」コラム執筆・ブログ(月間40万PV)・YouTubeチャンネル「強欲な青木&消防設備士」の動画作成

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